::::雨が降り::::
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いつもの、朝の水浴びからの、帰り道。
「見事な、雲だ」、と空を見上げて歩いていると、
田んぼの穂の甘い香り漂い、下を向く。
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今朝の光は、なんだか、特別だ。
この淡い光は、シベリアの夏の終わりを思い出す。
光が、記憶の断片を照らしている。
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その雲は、シトシト、雨を降らしはじめた。
シトシトは、すぐさま、ザーザーに変わる。
川泳ぎで、すでにずぶ濡れであるのに、なんだか嬉しくて、駆け出す。
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家に駆け込み、着替え、雨降りの外を、縁側から見つめる。
その先に、先ほどまで身を浸していた、四万十川が流れている。
左から右へ、いつものごとくに流れている。
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ぼくが知っている限り、この流れは止まったことはない。
水あれど、流れが止まってしまったら、川とは呼ばないのだろう。
ぼくは、どれだけ、川の恩恵を受けて、暮らしていることだろうか。
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川の流れている様子は、いつも、心に静けさを与えてくれる。
動いているものを見ると、こころは止まるのだろうか。
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流れは、海へ
流れは、空へ
音となり、谷に響き、空へ昇っていく
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夏の立ちすくむ熱風景に、こころは所在を決められず、落ち着かない。
止まっているものを見ると、こころはジッとしていられないのだろうか。
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雨が、降っている。
いつもの景色に、空からの垂直線が引れる。
風に、植物たちの葉が、ワサワサと揺れている。
雨と大地の出会いに、土の匂い、立ち昇る。
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動きに視点を合わせて、景色を見ていたら、
景色とは、躍動だ。
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川の流れ
雨の降下
葉の揺らぎ
土の匂いの立ち昇り
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ヘチマの黄色い花は、朝も早くに開き、太陽高く昇れば、閉じていく。
昨晩は、しおれていたゴーヤの葉が、今朝は、みずみずしく張っている。
植物たちの葉脈の流れが、そこにある。
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葉脈の先に見たのは、我がカラダの血の巡り。
景色とは、自身の現れであろうか。
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空に水平線を描いていた、鳥たちの飛来は、何処へ。
彼らも、どこかで、雨宿りをしているのだろう。
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