Wow !!  
昨日はおとぎ話にでてくるような日曜日を過ごしたよ。
クジラを押して海に帰してあげたんだ。
朝、みんなで、フランス人の女の子が弾くピアノを聞いていたんだ。
彼女は今日ここをでて、また別のところにいくというので、お別れにピアノを弾いてくれたの。
みんなでピアノの音に包まれて幸せな気持ちに浸かっているところに、一緒に住んでいるアメリカ人の女の子・ドーターがびっくりした様子で窓ガラスのドアを開けて入ってきて「すぐ下の町の浜辺にクジラが打ち上げられたらしいわよ!」って言ったの。
ぼくたちは、車に飛び乗った。
クジラってどんなに大きいのだろうとみんなの頭にもくもくと想像がいっぱい広がっていく。
車は坂道を海に向けて転げ落ちていく。
もう何年も前にノルウエーからアイスランドにいくフェリーの上からクジラを見たことがあったのだけど、潮を噴く部分がちょっと海面に見えただけで、よくわからなかったから、本当にどんなに大きいのだろうとわくわく。それと、同時になんで浜辺に打ち上げられてしまったのだろう、大丈夫かな?と心配。
車道から遠くに海上にひとがいっぱい集まっているのが見えた。
波打ち際から何100メートルも沖に人が集まっているものだから、どうやってあんな場所にみんないけるのだろうとふしぎだったけど、車止めて、車道からに海におりてみると、どうしてかわかった。ここは遠浅の湾で、時間帯によってはずーっと何100メートルも足が届いて歩いて沖まででれるみたい。

海を歩いて、向こうにみえる群衆に近づいていくと、手前に5、6人のグループが赤ちゃんクジラを抱えているのが見えた。わあ、本物のクジラだ!そこから50m先の群衆まで近づいてみたら、驚いたことに、先のあかちゃんクジラのように5~10人づつぐらいのグループで沢山の小さなクジラたちをかかえているの。てっきり大きな大きなクジラが1頭、でーんっと横たわっているものだと想像していたのだけど、どうやら小さなクジラたちの群れがこの湾に迷い込んできてしまったみたい。全部で60頭ものクジラがいたみたい。そのうち20頭は死んでしまったみたい。みんな、片手でクジラを支えて、もう片方の手で乾いてしまわないように水をかけてあげて、総勢数百人の人たちがクジラを助けるために集まっていたよ。

そこから、レスキューの人たちの誘導で、クジラをたち一頭一頭、一列になって沖へ押していってあげたんだ。とっても不思議な、夢の中にでもいるような光景だったよ。数百人という人間たちが、陸から何100メートルも離れた海の中を歩いて、一列になって何10頭ものクジラたちを脇に抱えて押して、沖に連れて行ってあげたんだから。腕の中で、クジラが戸惑って、弱っている様子が手のひらを通じて伝わってきて、みんな、大丈夫、大丈夫って、クジラたちを励ましてあげてるの。本当に人間と自然界の動物が、しかも、陸の人間と海のクジラが手と手をとりあって、この状況を乗り越えようとひとつになっていたんだよ。
もう、胸まで海水がくる沖まで出たところで、クジラたちを離してあげたの。くじらたちは、そっと尾ひれを跳ね上げて、ゆっくり海にもどっていったよ。
クジラたちに背を向けて歩きはじめると、この30分ほどの間に潮が満ちて、遠くに見える浜辺はさっきまでとぜんぜん違う様子になっていた。クジラが海に帰って、海がまた深さと広さを取り戻したように感じたんだ。おかげで、荷物を置いていた岩もすっぽり水の下で、お財布とカメラとお気に入りのシャツがもうそこにはなかったけど、まあ、いいや、クジラに会えたんだもん。水の中をずっと歩くのはきついものだから、ついスキップしたくなったんだけど、そしたら、ジャステインはもうスキップしてて、ほかのみんなもスキップしてて、水しぶきをあげながら水の上をはねて、浜辺へかえっていったよ。
町にある唯一のお店にに食材を買いにいくと、海からあがってきた大勢のひとたちが心から笑っている笑顔とともにそこにいて、何ともいえない幸せな空気に満ち満ちているのを各々が肌で感じていたんだ。
帰りの車のなかで僕たち四人はもうずっと嬉しくて嬉しくて、今も腕の中にクジラたちを感じていたんだ。夜、寝るまでずっと、今日起こった出来事をおもいだして、『Wow!!』って言っていたんだよ。『きょうのことは、僕たちがおじいちゃんになっても孫にも語れるね。』って。
そんな、遠い海の向こうのおとぎ話に出てきそうな日曜日があったんだ。。。。。