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改めて、「台湾旅行記」を書き直してみよう。要点ごとに上手にまとめようとしすぎたのか、しばらく書き悩んで手が止まっていたので、ちょっと日記形式に変えて書いてみようか。

日記形式で時系列で書いた方が、以下の点がわかりやすかなとも思いました。

・ぼくが台湾のことまったく知らなかったのに、どうやって現地に行ってから情報を集め、歩く旅をすることができたのか。
・どうやって、道すがらあんなに多くの台湾の素敵な人たちに出会うことができたのか。
・まったく知らなかったULの世界を、どのように実践していったのか。

などなどが、自然に書けるのではないかなー、と思いましたので。
他にも、みなさんが知りたいこと、書いてもらいたいことあります?

では、仕切り直しまして、台湾へ向けて出発の朝からのスタートです。

1月17日(水)

台湾へ向けて出発の朝。


Jetstar 8:30(成田)出発。

朝早いもので、昨晩から実家の練馬から移動して、成田空港近くの友人宅にお世話になり、まだ真っ暗な早朝に友人の車で成田まで送ってもらう。

荷物のチェックイン。

重さだけでいったら手荷物規制の7kg以内に済んだのだが、馬頭琴が規制のサイズ以内でないので追加料金で預けることにした。スイスナイフも機内持ち込みできないだろうしね。チェックインカウンターまでお見送りに来てくれた友人は、改めて荷物を眺めて、「なんでそんなに荷物が小さいの?それで2ヶ月も歩いて旅できるの?」と驚いた様子。「ぼくも、こんな思い切った軽い荷物で旅するのは初めてのことだから、どうなるかね…。バックパックの中には、もう一つの楽器のカリンバに、スケッチのための道具もはいっているんだよ」と、にっこりと答える。

11:40 台北・桃園空港到着

飛行機では隣の席になったタイ人の若い女の子にたどたどしい英語でやたらと話しかけられて、なんだかタジタジとしてしまう。約4時間の空の旅はあっという間で、着陸のアナウンスが流れる。窓から初めての台湾の地を見下ろす。飛行機から降りて、台湾の地に立つ。国内移動のような時間感覚ではあるが、やはり異国の地を感じる。五感で新しい環境をキャッチしながら順応していこうとするこの感じ、日常では使っていなかったいろいろな感覚が開きはじめている。

税関申告書の記入デスクでもタイ人の女の子と隣になり、ぼくが先に書き終わると、「よい旅を! 」と言ってお別れ。税関を通るときは、なぜだか相変わらずにドキドキとして背筋を正す。なんなのでしょうね、この感じ。そして、荷物をピックアップ。馬頭琴も無事に帰ってきた。楽器を預けると、いつもハラハラとする。

さて、ここからどうやって街に出たらいいのか。i-phoneを空港のWi-fiに繋いで、Google Mapで目的地を『Cow Records』と入れて調べるとシャトルバスの案内が出てきたので、チケットカウンターへ。バス出発前に給湯器を見つけて、水筒にお湯を補充。以前、中国を旅したときに、どこへいっても給湯器があって、地元の人たちが持参の水筒にいつもどこでもお茶を淹れている様子を目にしていて「いいなー」と思っていたので、台湾も同じかもと思い、重さの点で随分と悩んだのだが水筒を持って来てよかったと思う(この後の旅路でも、駅にホテルに公共施設、それに山小屋でも、予想通りにどこでもお湯の補給ができましたよ)。いつでも、あたたかいお茶を飲めるのは嬉しいよね。

バスは、空港周りの郊外の街並みを抜けながら走っていく。これからどうなるかわからないけど、願わくば歩いて旅するつもりだから、自分が歩く姿を想像しながら、街並みに、道に行き交う人々や車、動物たちの様子、はたまた野宿できそうなのか、そんなことを思いながらバスの車窓に顔寄せて外を眺める。このスカウティングセンサーを発動させていく感じ、旅が始まっている。しかし、未知の場所に、不安な気持ちはやはり出てくるものだ。

「ここだよ」と空港からバスに一緒に乗り込んだおばちゃんたちに教えてもらって、台北の街中でバスを降りる。そこから、ダンロードしておいたGoogle Mapを頼りにCow Records を目指す。そこで、三田くんや藍ちゃんから紹介してもらっていたコウさんと待ち合わせだ。日本からコウさんへ、「台湾に行きます。ぜひ、会いたいです」とメールを送っていた。

三田くんとは台湾出発のつい数日前に、鎌倉で再会したものだった。最後に会ったのは、2009年の末にぼくがニュージーランドに旅立つ直前にマーマーマガジンという雑誌の記事を一緒に作る打ち合わせをした以来だから、もう14年ぶりのことだろうか。「あのときは、ニュージーランドからのe-mailだけで、記事を作ったよね」とお互いに懐かしむ。久々の再会に嬉しく、ランチのカレーを注文してからの待ち時間にぼくたちを繋いでくれたマーマーマガジンの編集長の服部みれいさんに電話をする。しかし、残念なことに繋がらなかった(三田くんと別れた後に折り返しの着信があって、みれいさんとも電話口で懐かしい話をした)。ちなみに、マーマーマガジンの名付けの親は三田くんであるらしい。

三田くんとこうして久しぶりに繋がれたもの、藍ちゃんのおかげだ。藍ちゃんとは、いまのぼくの暮らしの場である四国で知り合って、去年一緒に2冊の本を作った。ULや山と道といった単語も、藍ちゃんから教わったようなものだ。ある時、藍ちゃんが「あ、そういえば三田さんと一緒に山と道でお仕事しているよ。琢哉さんも知り合いでしょ」と言ったものだがら、「あ、三田くん、それは懐かしいね!また、いつか、再会したいものだよ」と思っていたのが、数ヶ月の時を経て、鎌倉のカレー屋さんで実現したわけである。

 再会の喜びとともに近況報告をしばしした後に、三田くんに台湾のことやULのことをたくさん質問する。「四国お遍路とってもよかったので、台湾でも同じような歩き旅ができないかと思っているんだ」と告げると、三田くんが台湾を自転車で旅した時のことを話してくれた。そうか、三田くんは自転車で台湾を旅したことがあるのか!それは、歩き旅に近い有力な情報。なんだか、歩き旅ができそうなイメージになってきた。「コンビニがどこにでもあって便利だったよ」との言葉に、四国お遍路でもコンビニに随分とお世話になったことを思い出し、それは安心だと思う。

そうそう、この時点では台湾情報全く知りませんでした。こんな感じで、台湾行ったことある人に尋ねながら、旅のイメージをちょっとづつ手繰り寄せていく感じでしたね。けど、いくら事前に情報を集めたところで情報収集に時間とエネルギーを浪費してしまうのが常なので、「現地に着いたらなんとかなるでしょ、なんとかならなかったら、なんとかなることをやろう」といった、いつもの具合です。

さて、UL初心者のぼくの質問に、三田くんはULのDIYの精神の歴史から語ってくれ、「なんだかんだ言っても、自分で作るのが一番かっこよくてイケているよ」と、最後に一言そう言ってくれた。この言葉に、ぼくの気持ちはとても軽やかになったものだ。というのも、未知のULの世界の情報の沼にはまってしまっていて、何が正解かよくわからず気が重くなっていた部分もあったので。なんなら、いままでもずっと旅してきたスタイルがあるし、それで上手く楽しくやってきたのだから、今更、わざわざお金も時間も使いながらスタイルを変える必要もないのでは。と、そんな開き直った気持ちにもなっていた(しかし、今回の台湾旅で、荷物が軽いってこんなにも自由で旅の可能性が広がるんだ。そして、新たな挑戦でもあるのだ、と新しい旅の感覚を味わったのでした!)。

『三田くんと鎌倉のカレー屋さんにて』

そうそう、今回の旅の道具の中にも、新たに自分で作ったものがある。馬頭琴とカリンバの楽器のケースである。カリンバケースは、もともと靴作りをしていた経験を生かして作った立派な革のケースをずっと使っていたのだが、いまや、革は旅に重い。いまや格好良さよりも、重さが気になってしまう。ということで、ホームセンターからプラスチック製の養生マットを買ってきて箱を作り、このままでは見た目が悪いからと、和紙を貼って、柿渋を塗った。これで、見た目も好し。これで、軽さと、まだ手放せぬお洒落心が両立しただろうか。いやいや、お洒落も大事な機能のひとつだよね。

馬頭琴ケースは、図らずや一つ二役の納得の機能美となった。お遍路時にもバックパックの脇に馬頭琴を挟んで四国一周歩いたのだが、その時は、使わなくなったゴアテックスのビビィバックを解体して、縫い物上手の友人に馬頭琴専用の防水バックを作ってもらったものを担いでいた。今回は、そこに思わぬことからアップグレードがなされた。それは、こんな経緯だ。

ぼくはスリーピングマットといったらエアマット派だったが、どうしても旅中に穴が空いてしまう。空気が抜けたマットは、まったくに寒い…。ということで、新たな試みとして山と道のロールマットを手に入れたのだが、いざパッキングリハーサルをしてみると、やはりロールマットは嵩張るからどうしようかと困っていた。分厚いものだから、馬頭琴ケースの緩衝材にはちょうどいいのかもね!?、といままでの馬頭琴ケースに何気なく袋に突っ込んでみたところ、「あれ、これ、ここにこのまま馬頭琴ケースとしてパッキングしたら、ちょうどいいんじゃない。寝るときに引っ張り出して、スリーピングマットとして使ったらいいわけだし」と思いつき、スリーピングマットとして使える長さを考慮しつつ馬頭琴ケースにも入る長さにマットを切って整形して、これで、納得の適材適所を見つけることができた。よし、これで衝撃にもばっちりだ。馬頭琴を担いで歩くのに、ますます安心だ。この勢いで、UL化の第一歩として松山のt-mountainで手に入れた山と道のminiのバックパックを参考に、ライナーバックも作った。参考にとは、バックパック自体が濡れるのは仕方なくライナーバックでしっかりと防水するという考え方だ。そこで、もう10何年も前にニュージーランドで国立公園をトレッキングするときに買った黄色いバックパック用のライナーを解体して、ライナーバックを作った。閉じ方も、これも他のバックパックを参考に、紐からロールトップに変えた。これで、防水も衝撃も安心だ。これで、嵩張るからと一度は諦めようと思っていた分厚いスリーピングマットで、毎晩、快適に寝れるぜ!

確かに自分で作った道具を担いで旅するのは、なんだか自慢したいような、胸をえへんっ!と張ったような気持ちとなる。自分で作った道具だから、勝手がわかっているもので、壊れたっていくらでも直せる。もちろん、機能としては既製品よりも劣ることは多々だろうが、旅をしながらいろいろなシチュエーションで「もっとこうした方が、使いやすいだろうな」と気付くことがあるだろう。そしたら、その度にアップグレードしていけばよいわけだ(なので、裁縫道具もいつも旅で持ち歩いている)。そうやって、手作りの道具のブラッシュアップとともに、自分自身の感覚も研ぎ澄まされて共に成長していく感じも、もう一つの旅路という感じでよいではないか。こんな手作りギアに対する気持ちが、三田くんの言うところの「格好良い・イケている」の意味するところだろうか。

さて、空港から台北の街中に到着。バスから降りて、COW RECORDSを目指して歩く。初めての台湾の街並みにキョロキョロ、ワクワク(こりゃ、美味しそうな食べ物屋さんが、たくさんだ!)。

Cow Recordがようやく見えてきた。お店に着くと、ぼくが日本から来ることをスタッフのみんな聞いていたようで、みんな笑顔でお迎えしてくれた。みんなの笑顔にホッとした気持ちになる。旅先で、間接的でもぼくのことを知ってくれていて会える人たちがいるというのは、なんとも安心することだろうか。

 コウさんにヘクター、ヘクターの奥さんのジェニーや、他のスタッフのみなさんと「はじめまして」といっときお話をする。コウさんが「お昼ご飯は食べましたか?お腹空いてないですか?」といって、ホカホカの野菜饅に豆乳を買って来てくれる。それから、携帯電話の契約に、お店の近くの安くてよいドミトリーのあるHOTELを教えてもらったりと、今後の旅の段取りもコウさんにヘクターたちが手伝ってくれた。携帯電話は、せっかく旅にきたのだからこのまま無しでもいいかなと思っていたけど、コウさんやヘクターたちに会ってみて、こうして台湾の素敵な人たちと繋がっていけるのなら携帯電話はやっぱり便利だなと思った。おかげで、その後の旅でもたくさんの地元の人たちと仲良くなって、LINEを使ってのやりとりができたものだ。歩き旅中にはMapアプリにもだいぶお世話になった。あえて便利をなくそうと思っていたけど、スマートフォンという道具のおかげでできることが広がることも確かである。

ホテルは結局、日本からは何も決めずに台北までやってきた。けど、やっぱり現地で探してよかった。コウさんたちに教えてもらわなかったら、こんな手頃ホテルなんて見つけられなかったもの。そして、彼らのお店に近いのもなんだか安心だ。おまけにホテル周辺の美味しいお店もたくさん教えてもらったよ。

その後、ヘクターに、もう一つのお店Samplusまでお散歩して案内してもらった。そこには高知の山奥に暮らすぼくにはHPでしか見たことなくて憧れていた山と道や他のアウトドアガレージブランドの製品がたくさん並んでいて、「おお、日本では手に取って見る機会がなかったけど、台湾で見れた!」と、興奮した。

いっときして、コウさん家族とお別れ。コウさんに奥さんのマイちゃん、元気一杯の娘のまめちゃんたちは、「このまま引越し先の実家の草屯まで運転していくんだよ。ぜひ、草屯にも遊びに来てくださいね」と、家財道具をたくさん積め込んだ車に乗り込み、出発。続いて、ヘクターとも「明日、一緒に夕飯を食べよう」と約束して、お別れ。

『Cow Records のスタッフのみなさんと』

そうそう、コウさんやヘクターに「これから、台湾で何をしたいの?」と尋ねてもらったので、「台湾を歩いて旅したいな。できたら、山も登ってみたいな」と思っていることを伝えたら、「そしたら、台東のリンさんに会いに行ったらいいよ。台東は、自然がいっぱいあってよいところだよ」ということで、早速にリンさんに電話をしてくれて、明後日に台東でリンさんと会う約束をした。

ということで、明日は一日台北を観光して、明後日、台東へ移動という予定になった。
よし、いい感じで、今後の旅の旅程も決まってきた。

これにて、台湾第一日目終了。

台湾に無事にやって来れた。
よい人たちにも会えた。
ほっとして、ホテルのドミトリーベッドの床に着く。

旅というのは、川に飛び込むのと一緒だな、とつくづく思う。飛び込む前は、あれやこれや不安な気持ちになってしまうが、飛び込んでしまえば、あとは流れに乗って泳ぐだけだ。出発前は、久方ぶりの海外、はじめての台湾ということで、ずいぶんと緊張したり心配したりしたものだった。台湾に到着した今、流れが見えて来て、これから泳ぐ楽しさでいっぱいになっている。飛び込んでしまえば、見える景色というものは全くに違うものなのだなぁ。