今年、とびっきり嬉しかったお話。
高知にある、とあるCafe。引き戸が大きく開かれたそのお店には実に様々な人達が訪れ、ひと時を過ごして行く。旅行者に地元の人々、若い学生さんにおじいちゃんやおばあちゃん、様々な人々が自然とこの場所で和んでいる様子がとっても印象的な場所。間口が広いとはまさにこのこと。そして、このCafeへ毎日毎日コーヒーを飲みに来てくれる「おばちゃん」、みんなから愛され「おばちゃん」と呼ばれているおばちゃん。
おばちゃんは、雨の日も風の日も、お店をオープンしてから毎日毎日、大好きなコーヒーを飲みに来てくれるのだって。
「おばちゃんは神様だ」って店主があるときつぶやいていたな。
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夏のこと。
店主がしばらく海外へ行くというので、しばらくの留守を預かり、憧れのこのお店でTABI食堂を2週間開かせてもらった。まだ暑さ本番ちょっと前、梅雨の終わりの頃でした。
やぱっり、はじめての場所のご飯屋さんオープンというのは緊張するもので、「お客さんが来てくれるかな」と心配になってしまいます。そんなぼくの心配を励ましてくれるかのように、おばちゃんは「たく坊、今日もご飯食べに来たよー」と、TABI食堂にも毎日毎日ご飯を食べにきてくれたのです。
「おばちゃんいつもありがとうね。」と言うと、
「いやー、たく坊のご飯がおいしいからだよー」って。
「たく坊のご飯食べてから、むっちゃ調子いいんやでー、ありがとうなー」って。
「コーヒー、一杯」
「コーヒーはTABI食堂ではないんだよ、ごめんね。」
「そうか、じゃあ、ハーブティー頼んでみるわ」「ハーブティーも美味しいなー」
そうして、ちょっと体重たそうに、ぎこちなく足を引きずって歩いて行くおばちゃんの後ろ姿を、みんなで見送るのでした。
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ネパールの旅を経て、約半年ぶりに高知のそのお店を訪れたら、おばちゃんはいつもと同じようにそこでお茶を飲んでいました。
「あー、たく坊、会いたかったでー。たく坊にお礼を言わなきゃあかん、あれからな10kgもやせたんやでー。」
「おかげで歩くのもめっちゃ楽になったし、もう着れなくなって仕舞いこんでいたジーパンもはけるよー。」
お店の人も
「おばちゃんは最近すっかりお洒落になって楽しそう!」って、教えてくれました。
「それに、近頃は、コーヒーだけじゃなくてハーブティーも頼んでくれるんだよ。」
おばちゃんは、TABI食堂のご飯を毎日食べに来てくれて、とっても調子がよかったから、そのまま自分の食生活を変えたのだって。一人暮らしのアパートで、毎食自分で作って食べて、腹八分目を気をつけて、お野菜中心のご飯にしているよ、と教えてくれました。
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あー、本当に嬉しかったな。
ごはんを食べて美味しいと言ってもらえるのは、やっぱり一番のご褒美だけど、その食べた後も、そのお料理がその人の日々の糧になってくれていたなんてね。。。
「『食堂かたつむり』のようなご飯屋さんができたら素敵だろうな」とぼんやり思っていたことが、現実になったような気分。。。
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最近よく実感するのはね、誰かを喜ばしてあげることができたら、それは自分を喜ばすことなんだなって。だって、誰かが自分のしたことで喜んでくれたり、感動してくれた姿を見せてもらえたら、自分もとっても嬉しいものね。そう思うと、感動をちゃんと伝えるのって、最高のお礼かもしれないね。自分の喜びをちゃんと相手に返してあげられるものね。
喜びの交換の輪、グルグルまわっているね。
だけどね、星野道夫の言葉を借りて「感動を伝えるのは、何よりも自分がその体験によって変わった姿を見せることだ。」って書いたことがあったけど(◎)、おばちゃんはまさにその通りに感動を伝えてくれたんだね。そのことによってぼくの心がどれだけ震えたことか、どれだけの学びを与えてもらったことか。
ああ、神様はこんなに近いところにいたのだね。
あっ、あそこにも、ここにも !