12月7日 霜降る朝 / 晴れ渡った空 / 冬の長く射し込む光りの中の土間

 

[慎ましさ]

 

音が聞こえた

 

 

谷を抜けた冷たい風が木の葉を揺らし

遠くでトンビが鳴いている

 

ストーブの上に蒸気を吐き出す薬缶

蛇口からぽたりと落ちたしずく

 

息を吸い込み膨らみは縮むお腹

体の伸縮にこすれる衣服の音

 

 

慎ましく日々を生きたいと願う

その思いは、幾ばくかの静けさを、こころにもたらしてくれる

 

今朝、その静けさは、息を吸い込みは膨らみ、息を吐いては縮んだときに生まれる体の伸縮差の空間に内在していた

 

この空間にとどまる心地よさを感じ、わたしはそこに在ることに意識をとどめようと勤めた

 

その場所から眺める景色のなかに、音が聞こえた

日々聞いているけれど、受け取っていなかった音たち

その音たちを認識し、振動する、細胞のひとつ、ひとつの揺らぎ

 

 

音が聞こえた

 

そして、

 

わたしは、いま、感じることができる、それを見ずとも

 

もう、川向こうのトンビは次の止まり木へ飛び立っていったことを

谷を抜けた風に続くさらなる風たちがやってきていることを

 

 

わたしは、いま、感じることができる、見えぬはずのものたちを

 

薬缶から吹き出る蒸気が、この空間の粒子と原子を踊らせ、混ざり合い、広がっていくことを

ぽたりと落ちたしずくの3次元の余韻の広がりを

 

 

わたしは、いま、感じることができる、無限なる内なる広がりを

 

呼吸をするたびに、この空間と繫がっていくことを

蒸気が原子を踊らせたこの空間の大気は、いまは、わたしの内なる宇宙に拡がっている

 

 

日々、慎ましくありたいと願う、その静謐なうつくしさと共に

わたしの前には、そのすべてが用意されているのだから

 

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