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:::当時、日本の友人たちに宛てたメールより:::
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《馬日記 その1》
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只今、馬に乗ってコスタリカ旅してます。目指すはグァテマラ、できればメキシコ、アメリカまで行ってみようっ!
現在、人間25匹、馬30匹、犬3匹、ウサギ2匹、きのうは蚤が沢山いました、で旅しています。
祖父の不幸があって、数週間だけ帰国した日本からコスタリカに戻って、どうやって山の中を馬で旅している仲間をみつけるものかと思っていたけど、結構すんなり皆んなと再会することができました。今はもう、馬に乗って10日ぐらいが、足ったのかな?曜日の感覚が今の生活ではないので、はっきりとわからないけど…。
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初めての乗馬、初めての馬旅、実際これは、なかなかにしんどいです。ぼくはもう3回も馬から落ちました。一回目は、思いっきり顔から落ちたので、顔に大きな傷ができてしまいました、、、。今思うと、顔面骨折しててもおかしくなかったぐらい…。何回も落ちといてなんでけど、ぼくは落ち方が上手いみたいで、擦り傷だけで今のところすんでいます。落ちたといっても、もちろん自分の技量不足なのだけど、馬がこける場合もあるし、サドルが落ちることもある。自分が直接の原因でないことが多々あります。けれど、馬の上に跨っているときは、その責任を全部自分で負わなければいけません。馬も自分が注意を払っていれば、アクシデントを避けれるのです。けど、まだまだ、今は馬に教わることのほうが沢山です。一回、ぼくが、仲間から外れて道に迷ってしまったとき、どうしよーと思っていたら、馬が勝手に歩き出して、正しい道を選び仲間を見つけてくれました。ぼくのほかにも、他の仲間も結構傷を負っています。馬も同じくに。初めて馬に乗る人たち、初めて人を乗せる馬たちばかりですから。まだまだ、馬もぼくたちもこの旅に慣れていく過程なので、アクシデントが絶えませんね。アクシデントを避けるためには、もっともっと色々なことを知っておかないといけなそうです。今はそれを体で覚えているところ、、。けど、ぼくはあまりに怪我するので、「お前、マゾだろ?」と言われるしまつです…。畜生、傷の分、みんなより早く上手に馬に乗れるようになってやる! あー、傷はもういやだ…。
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『落ちたばっかり。まだ、興奮しているせいかまだあまり痛くないよ。』
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この生活では、馬に乗っている時間がとても大きいので、ということは馬と話す機会が沢山です。馬の背中にずっといると、馬の考えていることが段々わかってくる気がします。多分、馬もぼくのこと凄い見ているんだろうな。馬だけではなくて、人間同士の関係も学んでいます。今は25人いて、これだけ、国籍に関わらず沢山の人が集まっていると上手くいかない場合もでてきます。それを仲間同士で、どう理解しあっていくか学ばなくてはいけません。けど、日に日にキャラバンの雰囲気がよくなって来ています。人も馬もどんどん理解しあって近くなってきてる感じがします。
今日は久しぶりに街にやってきました。今までは移動が多かったので、しばらくここに滞在して、馬も自分たちも休息をとります。久しぶりの街で、スーパーマーケットで買い物するのがとても楽しかった。
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あ、そう、そう、馬の名前はTABIと名付けました。
西洋のヒッピーの子たちは、親指が割れた地下足袋が大好きで、「忍者ブーツ」と呼んで親しみがあります。
ぼくも、今回の旅では地下足袋を日本から持ってきて履いていて、みんなに「いいな、いいな」と羨ましがられています。
そんな、みんなが大好きな「足袋」と、「旅」の意味をかけてTABIとしました。
「足袋」のごとくに、TABIと一心同体になって旅していきたいな。
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まだ、3、4歳ぐらいの若いアラビア種の、元気一杯の男の子です。
TABIも今まで人のことを背中に乗せたことがなかったみたいで、ぼくと同じくに乗馬のことを学び中です。
なんだか、同級生の遊び仲間ができた気分。
これから、ぼくもTABIも一緒に成長していきます!
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* 日記から思い返す *
* 当時への考察 *
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過去の自分の日記を読み返すのは、興味深いですね。
【キャラバン生活で、英語でのコミュニケーション能力が鍛えられた】
このキャラバンに参加する前までも、自分一人で諸外国を随分と旅して回っていましたので、それなりに英語を話させるつもりでいました。しかし、キャラバンの旅は、固定メンバーと二十四時間をともにしながらの旅で、このような旅の環境は初めてのことでした。それだけ時間を共有しているということは、決定事項も共有の元に決められていくわけです。しかし、ぼくは、込み入った話し合いになってくると、なかなか相手の言っていることが汲み取れなかったり、それにも勝って自分の主張を英語で伝えることができないことを痛感しました。それまでのバックパッキングの旅は、人と出会っても数日のことで、「どれぐらい旅している?」「今までどこ旅した?」「どこがよかった?」などの決まり文句を表面的なレベルでしか、英語でコミュニケーションしてこなかったのです。しかし、キャラバンでは、もう、今で言うTV番組のリアルショーみたいに、毎日すごいドラマが起きますし、それを、世界中から集まったメンバーの共通言語として英語で語り合っていたのです。こんなタイトな関係の話し合いは、母国語でもなかなか難しいものです。つまりは、英語という手段だけでなく、自分の在り方をも鍛えられていく日々でした。
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【キャラバン自体にも、人格とニーズがある】
日記の中に「辛い・しんどい」と言う言葉がありますが、何が一番しんどかったかと言うと、ぶっちゃけて言いますと「人間関係」です。もちろん体力的にも、めちゃくちゃしんどい旅でしたが、それは、願ったり叶ったりの旅の試練です。しかし、人間関係の軋轢がキャラバン事態のエネルギーを落としているのを、キャラバンのメンバー誰もが感じていました。このことに誰しもがストレスを抱えていました。しかし、この問題は、誰か個人を指しての問題ではありません。一つのキャラバンが、抱えているメンバーの数の多さからくるストレスです。馬未経験者が多かったこともあるかもしれませんが、とにかくはじめの数週間は30人近くになる大所帯のキャラバンで、キャラバンとしてのダイナミズムが全くに生まれませんでした。何かを決定するのにも、これだけ異なる文化の人々が集まり、それぞれに個性の強い人たちでしたから、意見の衝突は、毎回の話し合いごとでした。いざ、行動に移そうという前に、みんなのエネルギーがダウンしてしまっていました。次回の日記の内容にもつながっていくのですが、旅の経過ともに、メンバーの数も減っていき、人数と反比例してキャランバンのダイナミズムと一体感が生まれてくるのをしかと感じました。そこからさらに先では、ついにはメンバーが二人だけという時代もくるのですが、その時はもうキャラバンは全く異なる目的を持った別の物語でした。このように、キャラバン自体にも目的とそれにあった適正人数というものがあるのだと認識しました。旅の経過とともに、キャラバンの人格というものにも、意識をするようになっていきました。
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=馬日記その2へ、つづく=