1月19日(金)

3日目

 ホテルをチェックアウトして朝一番の台東行きの特急列車に乗るつもりだったのに、駅までいったらすべて満席だった。しょうがないので、空席のある正午の電車のチケットを買って、駅近くを数時間ブラブラすることに。

 そうそう、ULで荷物が少ないと、こんなアクシデントのブラブラ時にも調子が良い。ロッカーや荷物預け場を探すことなく、荷物を背負ったまま街歩きに行ける。日常のデイバックと変わらない感覚だものね。いつもたくさんの荷物を背負って旅していた僕としては、これは、シームレスな新しい移動感覚だ。いままでの具合で言ったら、旅中に街に来たら、まずは荷物が置けるところを探すギャップが間に入ってから行動が始まっていたからね。しかし、バックパックの中には、アイテム数は減って荷物の重さは半分以下になったというのに今までと同じ機能が揃っている。楽器に、スケッチ道具、テントに、自炊道具の全部が揃っている。これは、まるで魔法のようだ。

 「あ、そういえば」と、調べてみると、台北在住経験のあるサンシャインジュースのノリくんに教えてもらった素食のご飯屋さんが、駅から歩いて行ける距離にあったので、しばらく駅の周りをウロウロとした後で、そこではやめの昼食を食べることにした。素食とは、台湾の菜食のご飯屋さんのこと。街中でちらほら見かけ、ベジタリアンにとっては嬉しい台湾の食事状。お店に着くと、作り置きのお惣菜が何十種類もお皿に盛り付けられている自助餐(ブッフェ形式)のご飯屋さんだった。好きなものを選べるだけに、どれを選ぶか悩ましい。あれやこれも目新しく美味しそうな料理ばかり。やっとの思いでお皿に盛ったてんこ盛りの料理と共に席につき、いざ、ランチを食す。椅子に座ったテーブルからの景色に、「台北に住んでいる頃は、ここでよくご飯を食べていました」とのノリくんのメールの一文を思い出しながら、ノリくんがここに来ていたことを思い浮かべ、感じてみる。こうして、誰かの思い出の残り香からその場所に入っていけると、そこに行ってみたいとの動機や、そこでの体験の彩りが変わるものである。そして、その場所に自分の足で行ったことで、自分の思い出もまた語れることが、すでにあった物語に続きの物語を綴っていくようである。電車に乗れなかったおかげで、ここでお昼ご飯を食べれてよかった。あたたかな気持ちに、お腹も一杯だ。店先にあった甘味の豆花を食べられるお腹の余裕がなかったのは残念なところだが、欲張らずにいこう。


 台湾の電車旅はとても快適だった。車窓の向こうの景色を眺めながら、「ここを歩いて、旅できるだろうか」との思いを巡らせていく。やはり、拠り所のない新しい土地に、「よし、できそう、楽しそう!」との思いより、「大丈夫かな?」との思いが、大きく出て来ている。しかし、これも、飛び込む前の川である。飛び込む前は心配がつきないものだ。

 台東についてからのリンさんとの待ち合わせの場所と時刻の指定に、今晩の宿をリンさんに早めに伝える必要があったので、電車の中でi-phoneにBookig.comのアプリをダウンロードして宿の予約を済ませておく。やっぱり、携帯電話あると便利ね。昼食に思いつきでパッと調べてノリくんが教えてくれたお店に行けたのも、i-phoneがあったおかげだし。携帯電話の便利さと、オフラインの自由さとの狭間に、依然と葛藤中のわたしである。

 台東の駅からバスに乗って街まで出て、降りるバス停を間違えて、キョロキョロとあたらしい街並みをしばし歩いて、宿につき、ホッと一息ついたところで、リンさんと一家が宿まで車で迎えに来てくれた。家族一堂、「よく来たね!」と笑顔で迎えてくれた。やはり、見知らぬ土地で地元の人と繋がれるって、安心だね。心に沁みる。「さあ、どうぞ」と車に乗り込んで、みんなで夕飯を食べにいく。

『台東の夜市』

 菜食のぼくに合わせて、先住民の人たち(何族だったかな?)の野草を使った料理をたくさん食べさせてくれるご飯屋さんに連れて行ってくれた。いままで見たこともなかった、山菜料理に舌鼓を打つ。

「これから何をしたいの?」とぼくの旅の計画を聞いてくれて、いつも通りに「台湾を歩いて旅したいな。山もできたら登ってみたいです」とリンさんに伝えたら、「台東からも行きやすい、山の上に綺麗な湖がある嘉明湖登山がおすすめだよ」と。すると、「登山には許可書を取らないといけないから、申請にしばらく時間がかかるのと、しばらく天気も悪い予報だし、山に行くのは一週間後ぐらいでどうかな?わたしが、申請を手伝いますよ」とリンさんが親切な提案をしてくれる。一週間も宙ぶらりんの時間になってしまうのは時間を持て余してしまいそうで、「うーん、これは、どうするべきか」と決断をいっとき迷ったが、「まあ、急いでもしょうがない。それに、リンさんがそういうのだから、そういうことなのだろう。お任せできる機会なのだから、ぜひ、リンさんにお任せしよう。そして、思わぬ展開に、思わぬことがあるだろうよ」との気持ちで、「じゃあ、一週間後に山登りできる段取りで、お願いできますか?」とリンさんにお返事する。

『山菜料理を食す』

「あと、ぜひ、先住民の音楽を聞いてみたいです。David Darling & The Wulu Bununという、西洋のチェリストと台湾の先住民の布農族が協奏しているCDが大好きで、ぜひ、そのオリジナルの彼らの歌を聞いてみたいな」と告げ、「ここで聞けるらしいですけど、しっていますか?」と、日本の友人から聞いていた台東の布農族のビジターセンターを地図上で見せる。すると、奥さんのセリーンが「音楽といえば、明後日の日曜日に、娘の中学校の吹奏楽部の発表会があるから、琢哉さんもそこで演奏しませんか?先生たちに、大丈夫か聞いてみます」と。「おお、いきなり中学校で演奏するの!?これぞ、思わぬ展開!?」とたじろぐも、「台湾の子供たちや父兄に聞いてもらえるなんて、それは、嬉しい機会です。ぜひ、やりたいです!」とお答えして、なんだか台湾の初コンサート!?が2日後に仮・決定する。つい昨日、台北でもいきなりギャラリーでのコンサートが決まったけど、こう言った場所は日本でもやったことあるからどんな感じか想像がつくとして、学校での演奏というこのパターンはいままでなかったから、大丈夫かなぁ!? まあ、やったことがないことだけに、やってみたら面白そうね!

ご飯もいっぱい食べて、また車で宿まで送ってもらって、「連絡取り合いましょうね、よい週末を!」といって、お別れ。はるばる台北から台東までやってきた一日だったが、なんだか台東、面白くなりそうね!

『宿の前で、リンさんと』