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1/25(木)
Day 9
昨晩、リンさんから連絡があって、嘉明湖登山のパーミションの申請が取れたようだ。あとは、指定の口座へお金を振り込むだけ。ぼくが、お金の振り込み方に困っていたら、宿のスタッフの男の子が助けてくれた。どうしてもぼくのカードではうまくいかず焦っていたら、彼が「ぼくが代わりに振り込んであげるよ」と言って、二人でコンビニに行ってATMから彼のカードで振り込んでくれた。彼に現金を直接渡し、「いやー、めちゃくちゃ助かったよ。ありがとう!」とお礼を述べ、気持ちばかりのチョコレートも彼に渡した。それにしても、台湾の人たちは誰も彼も、本当に親身になって助けてくれる。こんな親切のシャワーばかり浴びていると、ぼくも誰かに親切をしたい気持ちに溢れてくる。こうやって、親切心の循環が生まれるのかな。だから、この国のひとたちみんな、こんなにも優しいのかな? 台湾すごい国だ!
さて、嘉明湖へは来週の月曜日からの許可が取れたので、まだ数日の時間がある。けど、リンさんの言う通りに、しばらく山に行くのを待ってよかった。相変わらずに悪天候が続いているもの。そして、地元の人もびっくりするぐらいの寒さが続いている。しかし、来週頭には、天気も回復するとの予報だ。
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海にはもう満足したので(サーフィンするのは諦めました)、蘭嶼(ランユィー)島へ行ってようと思う。三泊四日して日曜日の午後に台東に帰れたらとの予定だ。で、翌日の月曜日の朝、台東から山に向けて出発。
朝一番に、宿の前からバスに乗って南へ。台東のちょっと手前の港で降りる。船着場にてチケットを買い、出港までまだ時間があるので、周りを散歩して朝ごはん屋さんを探す。嗅覚を頼りに歩いた先によい感じの店を見つけ、あたたかい豆乳に台湾おにぎりの飯糰(ファントァン)をテイクアウトして、港へ戻る。船に乗り込み、席を取り、ほっと落ち着いたところで、出発。今朝は、運の良いことに晴れ空が少し覗いていて、海もそんなに荒れていない様子。海を眺めながら、朝ごはんとす。
1時間半ほどの船旅で、蘭嶼島へ到着のアナウンス。船の甲板に出て、向かう島を眺める。小さな島の、小さな港に、人々が行き交っている。本島へ出ていた家族のお迎えだろうか。船旅には、陸や空の旅とまた違った物語がある。

港に降りてすぐのところに、セブンイレブンがあった。島に降り立った感じ、どうにもこの先、島内ではお店は少なそうだ。こんばんはできたらキャンプしたいので、今日と明日の分ぐらいの食料を買っておこう。日本の友達が以前にここに来て、「海洋民族の村落に滞在して、とてもよかったよ」と言っていたばかりの情報で、あとはよくわからずにこの島に来たけれど、これから島を歩いて一周してみようと思う。歩いていたら、いろいろとわかるだろう。
さて特に目指すところもないので、とりあえず、気の向く方へ歩いてみる。と言っても、小さな島だから、左へ時計回りで進むか、右へ反時計回りに進みか、の2つの選択肢から選ぶだけのことなのだが。右手に見える港町のある方をとりあえず見てみたいとに、反時計回りに進むことにした。小雨が降り出す。

港の通りを歩くもどこもお店が閉まって閑散としている。まあ、冬だもの、オフシーズンなのだろう。そういえば、船にも観光客らしき人は僕以外に1組ぐらいしかいなかった。これはかえって、静かな島の本来の様子を見れていいかもね。
建物に挟まれた通りを歩ききってさらに進むと、海に空、島の景色が一気に広がった。このシンプルな大自然の情景に、こころ踊る。こころ踊る景色に出会えた、喜び。ちゃんと、こころの向く方向へ、進んでいるようだ。
道には野良ヤギたくさん、噂通りだ。ヤギをみながら、畑(芋なのかな?おおきな葉っぱの作物がたくさん畑にあるぞ)を両脇に、道を歩いていると、荷物をたくさん載せたり、二人三人四人!?乗りの原付がビュンビュン脇を走り去っていく(港から、各々の村に帰るのであろう)。たまに、ぼくの横でわざわざ停まって何やら話しかけてくる、おじさん、おじいちゃんたちがいる。中国語でよくわからないけど、「お前、歩いているけど、どこに行くんだ?この先まで、俺の後ろに載せて行ってやるぞ、さあ、乗れ。雨も降ってるぞ」と、雨のなか、何もない所を歩いている僕を心配して声をかけてくれているのかな? と察する。もしそうなら、ヒッチハイクしなくても、向こうから声かけてくれるなんて、すごいところ。そんな親切心にも、「歩きたいんです。歩いて島一周したいんです」と身振り手振りで答えると、「そうか、えらいな」といった感じのびっくりした様子を残して、また走り去っていく。
しばらくして、「こりゃもう、カッパを着ようかな」とやっとこさ決断し、どこかの軒先を見つけてバックパックをおろし、カッパを着込む。そうなのです、一旦、荷を担いで歩き出してしまうと、なかなかに、止まって荷を下ろす決断を先延ばしにしてしまうのです。いざ、やってしまえば、ちょっとしたことなのにね。早くやっといたら、その分、濡れずに済んだのにね。水分補給も一緒。この先、めんどくさがらずに、こまめにやっていかなきゃね。
それにしても、島にはたくさん犬がいる。ワン・ワン・ワンと、あちらこちらでとにかく吠えられる。その犬たちを見ていると、首輪が付いている犬もいれば、ついていない犬もいる。きっと、飼い犬も野良犬もわやくちゃ状態の放し飼いなのだろうか? 犬たちは、ワン・ワン・ワンと吠えて後をつけてきても、しばらくすると引き返していく。きっと、自分たちのテリトリーがちゃんとあるのだろう。飼い犬にしては、ちゃんと我が家の番犬のお役目を果たしているのだろう。
こんな感じで、歩けば犬に当たり、ワン・ワン吠えられ、構わぬふりして歩いて、犬たち去っていき、また、次の一群にワン・ワン吠えられ、しばし歩いて、犬たちまた去っていく。と、していたはずが、あれ!?、いつからか、どこからか、ずーっとぼくについてくる黒い犬がいる。しばらくしたら引き返すだろうと思っていたものの、ずーっとついてくる。それで「帰らなくていいの!?」と心配になって、その犬に話しかけてみるも、首輪がついていないところを見ると、野良犬なのだろうか。うーん、それなら、この犬がついてきたいたら、まあ、そのままにしてたらいいか。「帰れ」と言っても、言葉通じないしね。こうしてそのまま行き連れの犬と一緒に歩いていると、なんだか、桃太郎の気分になってきたぞ。なんだか、旅の相棒感が出てきたぞ。
もう、ここは素直に「よし、一緒に歩こう!」と、黒犬の同伴を認めると、彼女(犬はメスでした)は、どうにもごきげんの様子で、今度はぼくの前を歩き出す。あら、あなたの島を案内してくれるのかしら? なんとも不思議なことに、この黒雌犬ちゃんと、小雨の中、その後もずっと一緒に歩いたのでした。
半島に草原が生い茂った気持ちの良いところを見つけ、すこし風がつよいけど、ここでテントを張って寝ることにした。海には、厚い雲の幕。期待していた、夕焼けは望めないだろうな。

草むらの上、横になり、目を瞑る。テントの外には、相変わらずに黒犬がいてくれる。思わぬ旅の共に、今日1日どれだけ楽しかったことか。ありがとうね。そして、深ける夜に、なんと安心を与えてくれるものだろうか。そして、「いつか、犬と一緒に旅をしてみたい」との夢が叶った気持ちだよ。
いっとき寝たのだろうか、強い雨音に目を覚ます。止みかけたと思っていた雨が、寝ている間に、また随分と強まったようだ。犬は大丈夫だろうかと心配に思い、目を開ける。すると、黒犬のおしりだけがちょこんとテントの裾から中に突っ込まれている様子を目にする。きっと、この遠慮深い黒犬は、雨宿りしたい気持ちと、テントの中に入ったら申し訳ない気持ちで、こんなお尻の先っぽだけテントに突っ込んだ状態のまま外で雨に耐えているのだろう。テントの裾を上げ、「大丈夫?」と黒犬の顔を覗くと、犬は「あらっ!」という顔をしている。愛おしいものだ。彼女はずぶ濡れで震えている。「入っておいでよ、濡れちゃうよ」と声をかけると、犬はそろそろとテントの中に入ってきて(許可をもらえるまで待っていたんだね、ごめんね…)、乾いた草の上に丸くなり、安心といった感じで、すぐにスヤスヤと寝息が聞こえてきた。そんな彼女の様子に、「雨の中、犬も一緒に寝れて、フロアレスのテントでよかった」と、こころに思う。
雨音と犬の寝息を耳元に、再び、目を瞑り、朝を待つ。

