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1/26(金)
Day 10
薄暗がりに目が覚めるも、相変わらずに雨が降っている。目が覚めるといっても、寝たか寝てないかの状態が一晩中続いていたような。しかし、意識は目覚めていたけど、体の疲れは取れているようだ。きっと、これだけ雨が降っていて、風が強い状況下では、防衛本能が働くからか、深い眠りに落ちないのだろう。シェルターが、こんな薄いタープの一枚だけだったら、尚更だ。しかし、それは逆に、安心な家屋に暮らし慣れている日常では、刺激されない部分の感覚へアクセスしていっている感覚でもある。
黒犬は、丸くなってまだ寝ている。テント狭いスペースをなんとか工夫して、1時間の瞑想をしよう。雨で壁際にいくと濡れているので、なるべく真ん中へ。ぼくが体勢を立て直そうとガサゴソとしていると、黒犬は「大丈夫かしら?」といった様子で顔をもたげて、こちらの様子を伺っている。彼女が立ち上がろうとする前に、「大丈夫だよ、まだ寝てて」と、手をかけて、撫でて、瞑想す。膝に当たっている、彼女の体が暖かい。


瞑想も終わり、日も登ってきた様子だが、雨は止みそうにないので、雨の中パッキング。今日も一日、雨降りか・・・。そう、雨の中の、フロアレステントの一夜は、思ったほど濡れなかった。けど、やっぱり壁際は濡れている。けど、タープがかかっている真下の部分はちゃんと乾いている、と言った感じ。タープの裾から雨が侵入してきて、地面も濡れてしまうかなと思っていたけど(そうなったらスリーピングマットでなんとか浮島のように持ち堪えれるか!?と心配していたが)、寝床の地面はちゃんと乾いたまんまだった。もしかしたら、選んだ地面の吸水性が良くて、テントの中まで水溜りにならずに済んだのかも? これから、いろいろと考察、実験の余地はありそうだけど、案外、無事に雨の初夜を過ごせた所感だ。
さて、バックパックに荷物を収め、背中に担ぎ、ポンチョにもなるテント機能を初めて試す。ポンチョだったら背中に背負った馬頭琴もすっぽりと覆えるので、大切な楽器を雨から守れるだろうとの想定で、ポンチョにもなるSix Moon Desighns のこのテントを選んだのだった。
一晩過ごさせてもらった場所にお礼を言って、出発。海の上のどんより雲の向こうに、朝日が射している。今朝も黒犬はご機嫌で、僕を先導してくれていいる。さあ、鬼退治に出発だ。


朝一番に、海を眺望し、美しい島の景色の中を歩い浮かれる気持ち。けど、なかなかに雨風しんどく、耐える思い。とにかく、風が強い!これが、冬のこの島の天気なのかも!? 海岸線沿いをずっと歩いていて、遮るものも何もないので、どこからも風が吹いてくる。ポンチョは雨を防ぐのには(まあまあ)良いけど、風にはバタバタとうるさい。一長一短か。そして、気付くと、ポンチョに穴が空いている…。あー、さっき座った時にどこかに引っ掛けたのかな?そうか、行動着にするのには、より注意が必要な代物なようだ…。今後、気をつけよう…。何事もやってみないと、使ってみないと、わからないよねー。
歩いていると、ぽつぽつと小さな集落が出てくる。心配していた飲水の確保も、村の人に教えてもらって、海岸の岩場に湧く湧き水を汲むことができた。

ある、集落を通り過ぎて歩いていると、黒犬がついてきていないのに気づく。振り返ると、もう1匹の黒犬と一緒に戯れている様子を見つける。「おーい、行かないの!?」と声をかけるも、彼女は立ち止まって、遠くからじっとこちらを見つめている。その彼女の目を見て、「そうか、これがお別れの時なんだ」と察する。「それでも…」と、彼女を待つ気持ちで、しばし、そのままその場に立って彼女を見つめていたけれど、ぼくたち一人と1匹の距離は縮まることはないまま時間が過ぎていく。ぼくは、状況を受け入れ、背を返し、歩き出す。彼女もその犬と一緒に、逆方向に行ってしまった。「きっと、素敵な彼氏ができたのね、よかった」と、寂しい気持ちを、彼女への祝福の気持ちへ変えて、自分の気持ちをはぐらかしながら、先ほどまでと同じように、前へと歩く。
けど、旅の途中に、こうしてちゃんとお別れのタイミングがあってよかった。しかも、犬からの意思での自発的なお別れだった。もし、島を一周して、フェリーに乗って本島に帰るその時まで彼女が付いてきたら、ぼくはどうしたらいいのだろうか、との思いもよぎっていた。それは、中米を馬で旅した時に、最後に僕だけ去って、1年も一緒にいた馬のTABIを残していった時の、やるせなさとか、申し訳なさを、思い出してしまっていたから。「うん、これでよかった」と頷く。この2日間、一緒に楽しかったよ。ありがとねー!

*
昼前に、なんと、営業中のご飯屋さんを見つける。びしょびしょの格好に申し訳なくも入っていき、ウキウキとメニューを見ていると、「あー、ごめんなさい、うちは朝だけで、もう店仕舞いなのよ」と、原住民の顔をした体が大きくて優しそうなお姉さんに言われる。「ああ、そうだよね、もうお昼前だものね」とがっかり。まあ、しょうがないと思って店を出ようとしたら、入り口に2階のゲストハウスの看板を見つける。「そうか、もう、泊まっちゃおう!」と思って、「ゲストハウスには泊まれますか?」と、お店のお姉さんに尋ねる。もう、この雨の中、歩いて、さらにキャンプでの一夜は楽しめない。もう、楽して、宿を取ろうではないか!なんか、この村、雰囲気良さそうだし。
お姉さんが「うーん、やっているかしら。オーナーに電話して聞いてみるわね」と言って電話をかけてくれた。しばらくお返事待ちとのことで、その間に、「ご飯を注文できなくて、ごめんさいね。お詫びに、これ飲んで!残り物だけど」と言って、LLサイズの紙コップに並々いっぱいのミルクティーをプレゼントしてくれた。わー、なんて嬉しいことだろう。
しばらくしてから、「ごめんなさい、やっぱりオフシーズンの冬は宿を閉めているから、難しいって」と言われ、「そしたら、この村で他に宿ありますか?」と尋ね返すも、「冬の間はどこも同じだと思うわ。ご覧の通り、冬の天気はずっとこんなでしょ、観光客なんてだれも来ないもの」とのお返事。そんなこんなしていたら、他の村人もぞろぞろと集まってきてくれて、「どうしようか、どうしようか」とみんな心配してくれている。その内の一人に、短パン姿に雨具のジャケットを羽織った眼鏡の若い青年がいて、彼は英語が少し喋れた。彼だけ原住民の顔ではなくて台湾本島の人の顔をしている。どうやら、彼は、島に派遣された警察官のようだ。事情を説明すると、彼は、「警察署の前だったら軒があるから、雨に当たらずテントを張れるかもよ」と、提案してくれた。「え、警察署の前にテント張ってもいいの?」と驚きながらも、「それは、ある意味、安心ね」と思い、「それは、ぜひ、どんな場所か見に行かせて」と答えると、警察署はそのお店のすぐ隣で、彼と一緒に歩いて見に行く。お店を出るお別れ際に、お世話をしてくれてお姉さんが、「ぜひ、また夏にきてね。天気もいいわよ。私たちの伝統のトビウオ漁も見れるわよ」と言ってくれた。
「ここだよ、どうかな」と指差してもらったところは、確かに大きな軒のある、まさに警察署の建物のだった。けど、残念なことに下がコンクリートである。「テントは自立式ではなくて、ペグが地面に打てないと、建てられないんだ」と彼に説明すると、「 I understand. 」と言ってから、「うーん、では、どうしようか…」と次の策を考えてくれている。「もっと大きな集落に行こう。そこなら、やっている宿があるかも。さあ、乗って」と言って、パトカーの鍵をポケットから取り出した。その様子に、「歩いて島一周したかっけど、どうしようかな、あきらめるか…」と決断に迷う。「まあ、これも旅の成り行き。このまま、流れのままにお任せしてみよう」と思うことにした(若かれし頃の自分ではこう思えなかったなー。いつも、「絶対にやりきってやるぜ」と思っていたもの。こうやって、状況に応じて少しはお気楽に振る舞えるようになったのも、年の功かしら)。そして、「わざわざ、ありがとう」と言って、パトカーに乗り込む。「これも、ぼくの仕事だよ。困っている人を助けなきゃね」と、若い警察官の彼。珍道中旅、なんと、今度はパトカーに乗せてもらいました・笑。
昨日今日歩いた道を、一気に逆戻り。車って、すごい、あっという間。車中、英語で彼と楽しい会話をする。若い彼は、日本のことに興味津々のようだ。僕は、間近に迫った旧暦の正月は、台湾ではどんな様子なのかを尋ねる(台湾では、西暦1月1日の正月ではなくて、旧暦の正月(毎年違って、だいたい2月の頭頃)を祝う風習のようです。このお正月は、家族が一同集まる、一年で一番大切な家族の時間のようです)。「ああ、ここ」と言って昨日通り過ぎて見覚えのある、この島にしては珍しい大きな鉄筋の建物の前に泊まる。どうやら、彼はここの人と知り合いのようで(小さな島だもの、そりゃ、島民同士みんな知り合いかもね。警察官ならなおさらだよね)、ぼくのことをチラチラみながら宿の人に事情を説明してくれている。
「ああ、やっぱりここもやってないって」と、彼が申し訳なさそうに伝えてくる。「あと、この人たちが言うには、今日の便を逃したら、数日フェリーがないかもしれないって」と教えてくれる。「ん?、ということは、このまま島にロックダウンされるということ?」と、もしそうなった場合のいろいろな想定が頭の中で巡り出す。まず、山登りに間に合わなくなったらどうしよう。そして、この状況で、この島で数日何をするの?(それも、予想外のことが起きて面白いかもだけど、、、)
彼は、「もし、あれだったら、このまま港まで送ってあげるよ。まだフェリーに間に合うから」と、新たな一手を提案をしてくれる。「え、昨日来たばっかりだったのに、もう帰るの?」とちょっと拍子抜けの気持ちになったけど、まあ、いいか、帰ろう、もう打つ手なし、と観念する。というか、帰らなきゃ、帰れなくなるかも!?、だからね。「そうだね、港までお願いしても大丈夫かな」と言うと、「もちろんだよ」と言ってくれるも、なんだか彼も「せっかくここまで来てもらったのに」と、残念そうな表情が浮かんでいる。
「ほんと、ありがとね」と言ってパトカーに乗り込む。運転中の会話では、彼は警察官のお役目から若い好奇心の旺盛な青年の姿に戻り、さっきのお話の続きに会話が弾む。日本を紹介する、お気に入りのYouTube番組などを教えてくれる(なんか、いろいろな番組がYouTubeにはあるのね)。
港に向かう途中、「お昼ご飯食べてないままでしょ、どこかで食べたら」と言って、ご飯屋さんを回ってくれたけど、やっぱりどこも開いてなかった・笑。
港について、若くて立派な警察官の彼とお別れ。黒犬といい、彼といい、この小さな島だからこその大きな大きな出会いがありました。想定外のことだらけだったけど、来れて、よかったよ。また、夏に来たい、夏に期待!
しかし、想定外のことまだ続きました…。遠足は家に帰るまでが遠足とはよく言ったものだ。帰りのフェリーが悲惨だった…。海が荒れていて、波を超えながら進む船は、ずっとバウンシングしている状態。フェリーに乗り込んだ時に、何も考えずに空いているからと、前の方の席を取ったけど、そうか、みんな揃って後部座席に座っている理由は、後ろの方が揺れが少ないからか。そう気づいたものの、揺れがすごすぎて、立って歩いて後ろまで移動できるような状態ではない。しばらくしたら、嗚咽の声が…。続いて、一人、二人…。ここからの詳細の記述は、あまりに悲惨だったのでやめておきます。最終的には、乗客の8~9割がリバースしてしまってたのでは…。ぼくもやばくなってきて、どうしようかと思っていたら(昼ごはん、レストランやってなくてよかったー)、空いている席を一列使って横になっている人たちに気づき、もしかしたらそちらの方が楽なのかもと気づき、ぼくも窓際から、隣の中央の列の席になんとか移動して横になったら少しはマシで、なんとか、かんとか、持ち堪えられました…。
やっとこさ、台湾本島に上陸。バスに乗って台東へ帰る。そう、もう台東へは「帰る」といった勝手知れた気持ち。宿も迷わず、前回と同じ場所へ。「定宿」の響きもいいねぇ。宿に着くと、宿主が「あれ、思ったより随分早くに帰ってきたね。おかえり」と、笑いながらお迎えしてくれた。
短パンTシャツ一丁になって、衣類全部洗う。暖かいシャワーを浴びる。洗濯物干して、バックパックも全部ひっくり返して、キャンプ道具も一式全部広げて干して、そして、ベットに潜り込む。
はあ、便利。
はあ、安心。
やっぱり、
街も、最高ね!
島と街、
キャンプと宿、
雨に晴れ、
あっちとこっち、
行ったり来たりすると、
両方のありがたさを、
改めて、噛みしめられるものなんだなあ。
明日は、街で美味しいものいっぱい食べてやる!
