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1/29(月)
Day 13
目が覚める。
大変寒かった。
瞑想。
1時間終了の鐘。
外はまだ薄暗い様子。
まだ、日が登っていないのか、霧なのか。
カーテンを開け、外を覗く。
濃い霧。
この時間に出発してもヒッチハイクの車は捕まらないだろうと、
カリンバの演奏(ドミトリーだと音出せないけど、今朝はシングルルームだからね)。
手かじかみ、下の台所にお湯をもらいに行き、部屋でお茶を淹れて飲む。
パッキング。
窓の向こうベランダの下から、昨日仲良くなった家族の声、そして、車の出発する音。
お別れを言えなくて、残念だった気持ち。
バックパック背負い、部屋を見回し今一度確認し、部屋の鍵を持って、部屋を出る。
宿のおじいちゃんおばあちゃんに、お礼を言って、お別れして、出発。
雨は降っていない。
霧もすこしづつ、日が昇ると共に晴れてきた。
昨日の歩いて知った道を戻り、村の入り口とバスがやってきた車道との交差点へ。
ここの交差点なら、山の下から登ってきた車と、村から出ていく車の両方を捕まえられるだろう。
村の方から軽トラがやってくる。
こちらが突き出した右手の親指に、運転手は人差し指を進行方向に突き出し、苦笑いで答える。「ちょっとそこの畑へ行くだけだから」と言いたいのだろう。村人たち、朝の畑へ。ここは、高原野菜の産地のようだ。
そんなやりとりを数台の軽トラとした後に、今度はセダンが止まってくれた。中を覗き込むと、若い台湾人の男子三人組だ。彼らの車と身なりに、村人ではなく、他所からの観光者のようす。「この先の嘉明湖の登山ルートの入り口まで行きたいのだけど」と英語で話しかけると、「ああ、オッケー、オッケー」と言った感じで、後部座席のドアを開けてくれた。中に乗り込んでお話をすると、彼らは大都市・高雄からの若者で、僕と同じくに今日から嘉明湖へ登山に行くらしい。しかし、その情報を得たあとには、たいして会話も弾まず・失笑。ヒッチハイクした身としては気まずいなと思いながらも、彼らの沈黙を尊重し、ぼくも無理に話しかけず、窓の外の景色を遠慮なく楽しむ。
GoogleMapを確認しながら、「ああ、ここが温泉がある河原に降っていく入り口だ」とこころにつぶやく。「しかし、これは、遠かったな。ずっと、急な上り坂だったし。これを昨晩バス降りてあのまま雨の中目指していたとしたら、それは本当に大変なことになっていたぞ」と、昨晩の出費を惜しみながらも宿を取った自身の決断を褒める(しかし、GoogleMap のナビの歩き時間は、100%は信頼しない方が良さそうだ。特にメイン道路からはずれた行程の場合は)。
登山口の入り口の公園につき、車に載せてくれた彼らとお別れ。おかげで、心配していた登山口までのアクセスだったが、朝の早い時間帯のうちに無事に到着できました。

公園入り口の事務局へ、登山許可書を提出。「おお、待っていたよ。リンさんから聞いていてね」と、受付のおじさん二人が迎えてくれる。二人とも、日に焼けた屈託のない笑顔がいかにも山男といった印象だ。事務所でお茶を出してくれ、山行の様子を聞いたりしながらいっときお話しをする。おじさんは、とにかく、大らかに、晴れやかに、楽しそうに笑っていて、そんな爽快な様子に、もうなんだか山頂からの景色をすでに味わっているような気分になった。もう山がこのおじさんの中に息づいている。
小雨降る中、さあ、出発。
憧れの台湾での登山に小躍りした気持ちで、小刻みよく歩いていたら、あっという間に、今晩の予約してある山小屋に着いてしまった、まだ昼前だ。
とりあえず、バックパックをおろしてベンチに座りお茶を飲む。
しばらくすると、他の登山者も次々と到着し、ここで一休みとしている。
すると、「あ、これ『山と道』ね!」との声に振り返ると、ぼくのバックパックを指差している女性の姿。「わたしもよ!」と言って、彼女のバックパックに、他のギアも見せてくれた。「一緒にお茶どうぞ」と言って、彼女と彼女の仲間達の輪に混ぜてもらう。ぼくは、「『山と道』を持っているだけで、お友達ができるなんて」と、『山と道』に感謝の気持ち。

いっときすると、の周りのみなさん休憩が終え、荷物をまたバックパックにしまい、また上を目指して歩き出している。「あれ、みなさんは、今晩この山小屋に泊まるわけじゃないんだ」と様子を観察していると、仲良しになって一緒にお茶をしたグループの人たちも同じくに、出発する様子。「よい時間をね」と言って、そのまま去っていき、ぼく一人だけ取り残される。「なんだ、ぼくも次の山小屋に泊まる行程にしておけばよかった…」と、急に寂しくなる。そして、じっとしていると寒くなってきた。歩いている時はよかったけど、やはり、立ち止まっいると寒い。とても寒い。「おい、まだ正午だぞ」と、まるっきりの余白の午後の時間と寒さにどうしたものかと、持て余す気持ちになる。人もぜんぜんいないことだし、ベットの上で午後中瞑想しているかなどど思うも、きっとそれも寒さに悩まされることだろう。うーん、動きたい、歩きたい。
すると、先ほどのグループの中にいたご夫婦の姿が。もしや、一緒に滞在する人が!と、嬉しな思いで話しかけにいくと、どうやら奥さんが高山病でしんどくて、予定していた次の山小屋へは目指さず、自分たちだけここに残ることにしたようだ。旦那さんは「幸いにもベットが空いていたので、山小屋の変更ができたよ」と言っている。ぼくは「大丈夫ですか」と心配しながらも、「それなら逆に、ぼくも、こっちからあっちの山小屋に変更できるのかな」と思い、山小屋の管理人室に相談しにいくと、予約表を確認してくれて、「上の山小屋もベット空いているから、君、上の山小屋で今晩泊まっても大丈夫だよ。ぼくが、あちらの管理人に連絡しておくから」と言ってくれた。ああ、よかった。まだ歩き足りなかった気持ちもあったので、嬉しい。
ご夫婦へ「変更できました」とお別れを言いにいく。「それでは、私たちのパーティーのみんなによろしくね」とお別れ。「あ、そうそう、上の山小屋で夕飯を予約していたのだけど、いまからキャンセルできないし、よかったらあなたが食べてくださいね」と言ってくれた。ぼくは自炊しようと思って食料を担いてきているけれど、それは嬉しいオファーこの上ないので、「それは、ありがとうございます」と答えて、「お大事にしてください」と言って、出発。
空も晴れてきて、ご機嫌に登っていく。休憩に、ノートとペンを取り出して、スケッチも。山登りに来るとスケッチをしたくなる。正確には、景色に意識を合わせて瞑想状態のような感覚に入るための手段として、スケッチをしたくなる。

森林限界線を超えると、景色がガラリとかわり、凍てついた氷の景色。


途中、あのご夫婦の仲間の一団に追いつく。ぼくの姿に驚いた様子に事情を説明すると、「あなたも、こっちにこれてよかったわね」と再会を喜んでくれる。

夕刻前に山小屋に到着。
山小屋の管理人に会いに行くと、赤いジャケットを着た大きな体の青年がいた。「ああ、君だね。下の山小屋から連絡がきたよ。リンさんからも、『よろしくね』と言われているからね。名前はアクです、よろしく」と、にっこりと笑って握手をしてくれた。山の男の人たちはみんな、笑顔が素敵である。

夕食前に自分の寝床の上で1時間瞑想。
そして、ありがたくも、山小屋のブッフェの夕飯をいただく。うーん、山で頂くご飯はなんて美味しいことよ。
台湾では、自炊している人たちは、どんな道具で、どんなものを食べているのかと、チラチラ覗き込む。
夕食の片付けが終わったのはまだ19時過ぎた頃だったが、他の登山者の就寝の様子に、ぼくも寝袋に潜り込む。
