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2/5(月)
Walk:Day 2
ビーチで起きる。
昨晩は、グランドシートだけを広げて寝たのだが、夜中に雨が降り出して、慌ててテントを張ってとなかなかに忙しいよるだった。
しかし、朝になって、雨も止んでおり気持ちのよい朝焼けを見る。外で寝ると、太陽昇ることを知らせる鳥の囀りで、目を覚ます。そして、こんな朝焼けに出会える。
パッキングをして、出発。
ビーチで勝手に寝たものだから、ここで滞在してよかったのか悪いのかしらないけど、日も登ってきたので、とりあえずここを一旦離れよう。このまま、ビーチで朝焼けを眺めていたい気持ちもあるのだが。少し歩いたところのビーチの公園にて、アルコールストーブでお湯を沸かし、インスタントコーヒーに日本から持ってきたバターコーヒーにパウダーを淹れて飲む。朝ごはんはこれでOK!
***
海岸線沿いの道は、昨日よりも風が強い、、、。
こうも毎日風が強いと、これがきっと台湾のこの地方の冬の気候なのだろう。
昼ごろになって、街を通り過ぎる。
街中に入ると、建物のおかげで風が遮られて、ほっとする。
建物に並びに、金物やを見つけ、「もしかしたら、馬頭琴の演奏によい折り畳み椅子が売っているかも」と思い、中を覗いてみる。店員のおばちゃんに、身振り手振りのジェスチャーで用件を伝えると、見事に思い描いていたような椅子があった。軽いし、とってもよい感じである。しかし、悩みどころである。ほんとにこれをずっと担いで歩いて旅をするのか、、、。何度も何度も試しながら迷う様子に、おばちゃんは途中から良い感じでほっといてくれたので、思う存分悩めた。すると、竹で編んだかわいい笠も見つけ、そちらにもときめく。そして、結局、両方買う・笑。
店を出て、新しいアイテムに心躍り、笠を頭に被り意気揚々と歩く。荷物の重さも、気持ちによって感じ方がぜんぜん違うのは面白い。同じ重さなのに、時にとても軽く、時にとても重く感じるものだ。といった感じで、気持ちフレッシュな状態で意気揚々と担いだ時点では「全然大丈夫!」とか思ってパッキングするのだが、後から「やっぱり重かった」の繰り返しである。さあ、この新しく手に入れた椅子と笠は行く行くどうなることでしょうか。
街中を歩いていると、「書家の素食」と興味をそそる看板があった。そろそろお腹も空いていたので、素食(ベジタリアン)のご飯をここで食べようと中を覗いてみる。すると、お店の壁一面に、素敵な素敵な油絵の風景画が何枚も何枚も張られていた。「書家」とは、書道のことかと思ったけど、どうやら絵のことのようだ。
すると、中からニコニコ笑顔のおじさんが出てきて、「今日は定休日だよ」と教えてもらう。「この絵は、おじさんが描いたのですか」と質問すると、「そうだよ」ともっとニコニコして答えてくれた。そして、「どうぞ、見てください」と手招きしてくれた。
とても好みの絵たちに感動して鑑賞をしていると、お出かけしていた奥さんも帰ってきた。「日本人?」と日本語で聞かれた、「日本語、ちょっと、ちょっと」と言ってお話をしてくれた。画家の旦那さんとは、お互いに伝えたいことがたくさんあるのに、なかなかお互いの言葉が通じずにもどかしい思いをしていたので、奥さんが日本語で間に入っていろいろと通訳してくれた。立ち話をしていると、「お茶しましょう、座って」といってお茶と、果物を振る舞ってくれた。
「ぼくも絵を描きますし、ベジタリアンのご飯が好きです」と共通項を見つけ喜んでいる状態の自分であることを伝えていると、旦那さんが「いまから絵を描くから見てて」と外に誘ってくれた。画材を前に、「君との出会いから、絵を描きたい思いになったんだ。どんな絵になるかな」と言って、一心不乱に筆を振り出した。
ぼくは、絵を描くおじさんの横にずっといて、恍惚の表情を浮かべながら絵に没頭していくそのエネルギーを感じていた。その有り様になにかとても多くのことを教えてもらっている感じがした。
絵は、ものの1時間ほど描きあがっただろうか。「こんな感じかな」と絵が描き終え、キャンバスから顔を上げたおじさんは、またいつものニコニコの表情へと戻っていた。
「僕は毎日、朝晩一枚づつ絵を描くんだよ」と言っていた。おじさんは、もう、とにかく絵を描くことが大好きなようだった。「いつも、こころの中に湧き上がってくる風景を描くんだ」とも言っていた。「君と出会って話していて、こんな絵が出てきたみたいね」。
お店がお休みでご飯を食べられなかったのは残念だったけど、おかげでこんなにゆっくりとお話をさせてもらえたので、とてもラッキーだった。
随分と長居してもまだ名残惜しかったが、そろそろ出発だ。「今度はご飯を食べにきます。ありがとうございました」と、お礼を言ってお別れ。歩き出したところで、おじさんが描いてくれたあの門があった。
***
午後になると、さらに風は強かった。
買ったばかりの笠は、何度も風に吹っ飛ばされそうになる。
被って見て初めて気づいたが、竹の笠は、日除けには帽子よりも影も大きく涼しくてもってこいなのだが、風にはめっぽうに弱い。風をもろに喰らってしまう。これは、ちょっと、選択ミスかも!?顎紐でもどうにもならないので、手で押さえながら歩いていたけど、結局、頭から取ってバックパックに縛り付けておいた、、、。
途中、焼き芋屋さんの屋台を見つけて、おやつに食べる。焼き芋好きのぼくにとっては、台湾では焼き芋屋さんをよく見かけて嬉しかった。
風は午後遅くになって次第に弱まってきた。
虹がずっと出ている。
海沿いの風の避けられる場所を見つけ、製図ペンと色鉛筆を使って、しばしスケッチをした。しかし、思ったように描けない。いつも家でパステルで描いている時のように、気持ちよく描けない。旅に持ち運べる、自分に合った画材を見つけたいものである。
今日も西海岸に沿いに綺麗な夕陽をみた。
真っ暗になるまで歩いたところで、海岸線沿いの防風林の中にテントを張る。きっと、木々の間だったら、風を防げることだろう。今晩のテント設営はより慎重に、テントを飛ばされぬようにと、大きな石を集めてきてペグの上に置く。
歩き旅、二日目終了。
あの書家のおじさんに出会えたのが、とても、とても、嬉しかった一日だった。