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台湾縦断歩行

Day 15

茶畑の隅っっこに張ったテントを畳み、出発。
標高の高い山腹の畑を抜け、谷底へと目指していく。

今日は、嬉しいことに、待ち合わせがある。

10日ほど前に、山小屋で知り合ったアクの地元を訪ねた際に、アクが紹介してくれた卓さんを訪ねる。その時は、卓さんはちょうど旧暦の正月で帰郷しているタイミングだったのだが、普段は僕が今日歩いて抜ける地域の中学校の先生をしているとのことだった。なので、「10日後ぐらいに、卓さんが住んでいる町を通るので、訪ねてもいいですか?」と尋ねたら、「ぜひ、連絡してください」と言ってくれていたものだから、昨晩にLINEししたら明日の朝にセブンイレブンで待ち合わせしましょうということになった。運が良いことに、ちょうど明日は日曜日で、卓さんも時間があるらしい。



この先に会える人がいると思うと、足並みも軽快になる。

段々畑を抜けて、小さな集落を抜けて、川沿いの車道に出た。舗装されていな車道に沿って、もくもくと歩いていく。途中、川に降りられる場所を見つけたので、朝一番の水浴びをすっぽんぽんでした。やはり川の水は気持ち良い。昨日の山の空気の浄化作用にもびっくりしたのだが、川水のような生きた水に触れる浄化作用もすごいものだなといつも思う。衣類の洗濯も、洗剤で落ちないものが川水で綺麗になったりする。素のままの自然の力は本当にすごい。それを人間は、あれこれ抽出して、組み替えて、疑似のものを作ってはしないか、、、。

久しぶりの沐浴の気持ちよさに、しばしの時間を使ってしまった。卓さんとの待ち合わせ時間に間に合うかなと、急足になる。すると、まったく車通りのないところにはじめて車が背中越しに走ってくる。すると、ぼくの歩いている横で止まって、「乗っていくかい?」と男性のドライバーから窓越しに声をかけてもらう。こんな交通手段のない場所を、朝一番に一人で歩いている姿を気にかけてくれたのだろう。このまま歩きたい気持ちもあったが、待ち合わせに遅れるのもいやだったので、「ぜひ」と言って、車に乗せてもらった。

しばらくの運転の後、待ち合わせのセブンイレブンに到着。おかげで、卓さんとの待ち合わせ時間より随分と早くついた。久方ぶりのコンビニがなんだか嬉しい、目移りがする。コーヒーとチョコレートを買って、休憩スペースで日記を書きながら卓さんを待つ。

時間通りに卓さんがやってきた。あの大きな笑顔に再会だ。卓さんの笑顔は安心の気持ちにしてくれる。卓さんの「さあ、温泉に行こう」との言葉に、「え、温泉があるの?」とびっくり最高のサプライズに、喜ぶ。あー、温泉入りたかった!



町から山に向かってドライブ。温泉街に入っていく。温泉旅館をわき目に見ながら運転している卓さんが、「ここじゃなくて、古くてよい温泉があるよ」と言ってもっと山の上の方へと車を走らせる。途中、卓さんの同僚の若い教師のグループとすれ違う。彼らも、m日曜日にこの温泉街に散策に来たようだ。

ようやく到着した温泉は、半分洞窟になった露天風呂で、お湯と自然を感じるだけのその質素なしつらえが最高に気持ちよかった。あー、歩き旅のつかれも癒される~。

温泉から上がり、また下の温泉街に戻ってご飯屋さんへ。どうやら滝に向かって歩いていった先程の同僚教師たちと待ち合わせしていたようで、一緒に円卓を囲んでご馳走を頂いた。あー、最高の休息日だ。

昼食後は同僚たちと別れ、卓さんが近所へドライブに連れて行ってくれた。道沿いには、樹々の花が咲き乱れている。満開の大きな樹の下では、日本ようにご老人たちが御座を広げてお花見をしている。その様子に卓さんは車を止めて、話しかけ、宴会の和に入れてもらった。その後も、教え子たちがバレーボールを野球やっているところを見に行って一緒に混ぜてもらったりと午後を過ごした。卓さんを見ていると、本当に人が好きでみんなと仲良くお話をする人だ。きっと、学校でも生徒に親しまれたよい先生なのだろな。

卓さんが赴任している中学校にも連れいて行ってくれた。校庭から遠くにすばらしい山並みが見えた。

卓さんの珈琲の焙煎所にも連れて行ってもらった。本格的な焙煎機がそろっていて、近々奥さんと一緒にカフェを開きたいそうだ。頂いた、焙煎した手の台湾産のコーヒーは、びっくりするぐらいに美味しかった。「歩き旅中にも、こうしたら飲めるよ」と言って、挽いたコーヒー豆をお茶パックに入れたセットを持たせてくれた。

夜には、宿も手配してくれていた。宿には、他の登山客の団体で賑わっていた。どうやらここは、台湾で一番高い山の玉山(富士山よりも高い3997m)をはじめとした、登山の起点になっている場所のようだ。

お世話になった卓さんとお別れ。おかげで、最高の一日になった。そして、とてもとてもよくしてもらった。

宿の夜の時間には、登山団体の皆さんとしばしテラスの食卓でお話をした。みんな、僕が台湾を歩いて縦断しているのを聞いて、びっくりしていた。

今晩の寝床は、野宿ではなくて、屋根の下、お布団の上。そのことを、ずいぶんに贅沢に、うれしく感じながら横になった。卓さん、本当にいろいろとありがとう。たのしいたのしい、養生の一日でした。